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If the shoe fits, wear it.
Marie-Ange Guilleminot - Shoe/Chaussure 1:1 - April 10 - May 29, 2004

Marie-Ange Guilleminot
Shoe/Chaussure 1:1


イントロダクション

展覧会写真

ニュースリリース

List of works: Photograph

List of works: Sculpture

Critique

Chapeau-Vie, 1995
Mes Poupée, 1993
Salon de Transformation, 1998
Gestes, 1994
Shoe/Chaussure, 1999
Shoe/Chaussure, 2001

■わたしの足で、だれかの靴を履くということ

身に着けるものひとつで、気分や動作がまるで変わってしまう。そんな経験はないだろうか? たとえばオンタイムとオフタイム。革靴かスニーカーか。足下が違うだけで、違うリズム、2通りの歩き方が生まれてくる。自分の靴を思い浮かべ、自分の歩き方をイメージしてみよう。そこから始めて、この想像上の歩行を少しづつ進めていってみよう。履いているのが、下ろしたての新品だったら? あなたの歩き方はどう変わるだろうか。あるいは、それが自分の靴ですらなかったら。たとえば、異性の靴。海の向こうの遠い文化圏の靴。さらには、遥か彼方の過去に誰かの足をつつんでいた、見たこともないかたちの靴だったら?

マリ=アンジュ・ギュミノの新作個展“Shoe/Chaussure(靴)”では、古今東西の実在の靴をテーマに、さまざまな要素が組み合わされる。モノクロームの写真や靴底の模型、ドゥローイング、etc。それらは鑑賞者の想像上の旅をうながすように、一人ひとりの足をつつむ仮想の靴になる。その見知らぬ靴を履くこと、それに見合ったリズムで歩くことは可能だろうか。そうした想像はそもそも、なにか意味があることだろうか?

“Shoe/Chaussure”には、彼女の過去の活動のさまざまなモチーフやテーマが集成され、かたちを変えて現れている。たとえば“Chapeau-Vie(生命の帽子)”。帽子になり衣服になる、「わたし」と「世界」の間のやわらかな皮膜。あるいは“Mes Poupée(私の人形)”。愛でるほどに、記憶や経験を残してかたちを失っていくもの。あるいは“Salon de Transformation(変容の間)”。モノを通じて、伝わっていくコト。

そしてテル・アヴィヴでのパフォーマンス。ギュミノは駅の公共スペースに、2部屋からなる告解部屋のような空間をしつらえた。狭く閉ざされた部屋から、彼女は両手だけを他方の部屋へと差し出す。通りすがりのだれかが明かりに誘われて部屋に入り、彫刻とも本物ともつかぬその手に触れてみると、お互いの「手」だけを媒介に、豊かな沈黙のコミュニケーションが生まれていく。

このコンタクトは、パレスチナによるバス襲撃事件の直後、街に政治情勢への不安がただようさなかに行なわれた。見知らぬ他者へと完全にゆだねられ、差し伸べられた彼女の指先では、宝石が光を放っていた。一瞬の交感を媒介に広がっていく、名付けえないエネルギーを祝福すべく。

“Shoe/Chaussure”のために選ばれた、多種多様な靴のサンプル。それらは地球上の文化の驚くべき多様性を示しながら、同時に、それらが支えつつむ「足」という空虚の共通性を浮かび上がらせる。そのかたちは人類の歴史以来、今日まで連綿と変わらず続いてきたものだ。だからこそあなたの足は、すべての靴をあなたの靴であるかのように履き、想像の中で他者のリズムを歩き出してみることができるのだ。

*If the shoe fits, wear it:
英語の諺。「あなたの足に合うなら、その靴を履きなさい(=思い当たるなら、それを自分のことと思いなさい)」。